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M.D.アンダーソンがんセンター 内科医 佐々木先生のお話

熊本大学医学部大学院を卒業後、第1内科で臨床医として肺がん診療をしながら留学先を探していました。大学院では基礎的ながん研究をやっていたので、どうしても、治療や診断に直結するようなtranslational researchができ、かつ肺がんがメインの教室ということで、M.D.アンダーソンがんセンター内にある現在の研究室に来た次第です。肺がんの世界では、この研究室のボスであるJack A Roth医師は大変有名で、遺伝子治療の第一人者です。肺がんに対して、P53という遺伝子を使った治療を初めて始めた人です。現在この遺伝子治療はまだ臨床治験の段階ですが、もうすぐ抗がん剤の一つとして売り出されるのではないかと思っています。先日、このp53の遺伝子治療の臨床治験に参加された患者さんが外来訪問されました。なんと5年目に入ったという事で簡単なセレモニーが開かれました。肺がんの非手術例で5年間生存した患者さんなど医者になって11年の私でも経験なく、この結果は、半ばやっぱりだめかとあきらめかけていた私に希望を与えてくれました。日本でもこの遺伝子治療に関する臨床試験は岡山大学病院、東京医大など4ヶ所で進められています。

日本では、新しい治療薬、治療法は、認可に至るまでに、非常に時間がかかります。理由は、病院内に臨床治験を専門でやれる者がいないことなど、なかなか症例が集められないことにあります。ところが、ここでは、臨床治験を専門で行うスタッフがいますし、情報がオープンで、ラジオなどでも、「どこどこで、何々の臨床試験をやってます。ご希望の人はどうぞ!」のように、広く参加者を応募しているのです。インターネットでも受け付けています。アメリカは、最新の治療が生まれやすい環境にあります。

がんに関して、日本の患者さんにとってメリットがあるとすれば、日本にはまだない分子標的治療(特定の分子だけを破壊していく治療法)がここMDアンダーソンには存在していること、そして、スタッフ数が多く、病気の治療に関わる専門家だけでなく、心理面のサポートを行う専門家など、クオリティ・オブ・ライフを重視したケアが受けられることでしょう。
セカンドオピニオンについても、スタンダードな治療に関しては、日本と違いはありませんが、新しい治療法を取り入れているので、日本では受けられなかったアドバイスが受けられるかもしれません。


佐々木治一郎
熊本大学医学部在籍中に母を肺がんで亡くし、卒業後、敵討ちのつもりで一内科(呼吸器内科)に入局。同大腫瘍医学教室(佐谷秀行教授)で学位取得。大学院卒業後、一内科で主に肺がん患者の診療にあたる。2000年7月から、留学。現在に至る。
今は研究が主体ですが、自分の研究が少しでもがんと戦う手助けになるならと思ってやっています。日本に帰ったら、臨床主体になると思います。

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