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M. D. Anderson Cancer Center Hospital 研修を終えて
  2003年2月-看護師

 今回の研修は、2月8日から3月8日までの1ケ月間、M. D. アンダーソンにおける造血幹細胞移植の実態と看護を学ぶことでした。しかしそれ以上に、実際の医療を見ると、日本との医療違いを感じ、驚きとため息の連続でした。

 1つめは、医師と患者さんとの関係がものすごくいいのです。医師は体も心も患者と向き合っています。いわゆる“聞く”ではなく“聴く”なのです。時間をゆっくりかけ患者の話をすべて聴いています。そして説明は患者の反応を確認しながら進められ、何度も「質問はないですか」「わかりましたか」と問いかけています。十分な説明、患者の理解と納得、そして同意・・・。これが本当のインフォームド・コンセントだと思いました。日本ではインフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳していますが、同意にいたるまでの患者と医者のやり取り、つまり理解と納得の過程にもっと時間をかけ、大事にしてほしいとずっと思っていました。ここではそれが普通に行われているのです。アメリカの医師に比べ日本の医師は忙しすぎるとは思いますが、cureだけはなく、careのできる医師が増えてほしいと思います。

 2つめは、やはりチーム医療です。私の病院と違い、ここにはソーシャルワーカー、PT,OT、入院患者のための薬剤師、栄養士、クリニカルナース・スペシャリスト、音楽療法士など1人の患者に多くの職種が関わり多角的方面からに治療・看護を提供しています。回診もチームで行われ、ゆっくり時間がかけられます。患者と言葉を交わしその日の状態を聴き、頭から足の先まで観察し、触診と聴診をします。一人の患者さんが終わるごとに、現状の問題や今後について簡単なミーティングが行われ、それぞれの職種が共通認識をし、患者をチームで医療している姿があたり前のようにありました。これは、まさに私の理想とするチーム医療のあり方で、ここでは毎日、普通に行われていることに驚きとため息がでました。そして、多種職参加のカンファレンスが多くされています。例えば、新患のミーティング、ケースカンファレンスなどです。立場の違う人からの意見が出され、それは素直に受け入れられています。これも、患者のために良い医療を提供しようと誰もが思っているからでしょう。どの職種も同じ方向を向いているのが感じられました。

 3つめは、患者の病気に対する前向きな態度です。日本は医師が治してくれると思っている患者や医師の威圧的な態度に意見が言えないと思っている患者が多く、非常に受身的です。しかしアメリカの患者は医師と対等で自分の意見をはっきり言います。非常に能動的です。これは国民性もあるでしょうが、こちらは入院費が高く、在院日数を少なくするためにも自宅でセルフケアしなければならないのです。病気とともに生活しなければならず、それゆえに医師と真剣に関わり能動的な態度にならざるを得ないのかもしれません。明るく前向きな姿が印象的でした。

 4つめは、患者さんの過ごす生活環境のすばらしさでした。病院自体大きくまるでホテルのようで、しかも静かなところにあり療養する環境としてはもちろんいいのですが、さらに病室がすばらしい。個室は広く、家具も落ちついた感じで使いやすく、快適に過ごしやすいようにできていました。患者だけでなく医療者にとっても無駄がなく、使いやすいように医療機器が備えられていました。日本のように白い壁に囲まれた無機質な空間ではないのです。入院治療のための部屋ではなく、患者が生活するための部屋なのです。

 以上のような現状を目の当たりにして、日本の患者さんは医療の質、療養環境ともに満足いく状況ではなく、また患者のみならず、私たち医療者も一人がいくつもの役割を果たさなければならず、アメリカ医療との差を実感しました。これをすべて日本に当てはめることはできませんが、このよい点を日本用にアレンジして患者さんが満足できるような医療システムになることを祈りたいと思います。

 最後に、今回はじめて“メディエゾン・テキサス”という会社の存在を知りました。セカンド・オピニオンを求めて世界各地から訪れる患者さんのために、そして、アメリカの医療を研修する日本人医療者のために設立された会社であり、その果たす役割は大きくかつ必要不可欠であると思います。私は通訳を手配してもらい充実した研修ができました。私のようなもののためにも、ますます繁栄され日米の架け橋となるよう期待しております。滞在中大変お世話になりありがとうございました。



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