※このページでの勝俣先生のお話は先生の承諾を得て作成させていただいています。
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授
シスプラチン75mg/m2の高用量でも外来治療が可能です。日本は世界の標準からだいぶ遅れてしまっています。世界では、15年以上前から、シスプラチンを外来でやっています。
胆道がんのシスプラチンは、25mg/m2を1日目、8日目に投与しますが、まさか、入院でやったりしていませんよね?
問題なのは、「原則入院で」としている施設。患者さんのためではなく、「施設の都合で」「ベッドを埋めるため」「入院を増やすため」「収益を上げるため」「医局の方針で」という理由で、原則入院でやっている施設です。
施設の問題でなく、医師の個人的問題で、外来化学療法は、「医師の経験不足で」「外来でやるのが怖いので」「外来でやる知識もスキルもないので」という場合には、教育することで何とかなると思います。
卵巣がんの化学療法TC療法は、原則外来治療です。副作用管理は、外来で十分に可能です。まだ、原則入院でやっている施設がいまだに多いのは困ったことと思います。
入院化学療法は、患者さんの社会復帰も阻害します。「仕事も続けたいので、通院で治療をできませんか?」と聞いたら、「お仕事辞めて、治療に専念してください」と答えた医師がいました。
初期の乳がんで、ずっと治療を拒否してきた患者さん。5 年が過ぎ、いよいよ皮膚に浸潤してきて、何とかホルモン療法をすることに同意してくれました。
1ヶ月飲んだだけで、数センチ縮小。「これならもっと早くから飲んでおけばよかった」と。2011 年頃から、このような患者さんが続出している。
骨転移が消えているのに、骨合併症予防薬のランマークを毎月3年間やり続けて、額骨壊死になった患者さんが来院されました。ゾメタ、ランマークをむやみに打ち続けるのは要注意です。最近のメタアナリシスでは、3 ヵ月ごとでも良いようです。
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園芸家の患者さんから、喜樹の絵はがきをいただきました。きれいな花ですね。
喜樹とは、イリノテカンの原料になる木です。英語で、Happy tree とか、Cancer tree というそうです。最初は、抗がん剤を嫌がっていたのですが、原料は喜樹だと紹介したら、やる気になってくれました。
植物アルカロイドと呼ばれる抗がん剤は、植物が原料になっています。つまり、自然界にあるものからできるのです。このことは案外知られていない。パクリタキセル、ビンクリスチン、イリノテカンもエトポシドもアルカロイド系です。
文科系の人、文筆業、音楽家、デザイナー系のかたは、抗がん剤嫌がる傾向にあります。自然のもの、ナチュラルなものが好きなようです。「抗がん剤も自然界のものからできるのですよ」と言うと、非常に驚かれ、興味をもってくれるようになり、抗がん剤をやってくれるようになることが多いです。
乳がんや肉腫に使うエリブリンという抗がん剤は、「クロイソカイメン」という海洋生物からできます。肉腫に使うトラベクテジンも、海洋生物のホヤが、原料です。肉腫は、海洋系が効くのか??これも自然界由来。
「NK(ナチュラルキラー細胞)が、がん細胞をアポトーシス」を謳い文句に、高額な免疫療法を売りつける、がんビジネスこそ、"アポトーシス"されるべき
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クロージングセッション:どこへ向かう日本のがん医療? "混迷を深める日本のがん医療。私たちの選択は?"
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免疫細胞療法、これまで何十年も研究されてきたが、良い結果が出ず、承認もされていない。現在では世界的にはほとんど研究されていない。ちまたで行われている免疫細胞療法は、研究的治療と言って良いのでしょうか?何のためにやっているのでしょう?
もちろん、免疫細胞療法が全て悪いというわけではありません。ただ、患者さんには、誇大広告でなく、正しい情報を伝えてほしいのです。何のための治療なのか?研究なのか、金儲けなのかもはっきりしてほしい。研究というのなら、患者さんから高額な費用を取らず、きちんとした臨床試験でやるべき。
世界的に言うと、免疫細胞療法で最も期待されているのは、キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法です。急性白血病で研究がすすんでいます。固形がんでも一部研究されています。これらの研究は、全て治験として行われ、無償です。
CAR-T 療法、自治医大でやっているようですが、きちんとした臨床試験でやっているようです。
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