※このページでの勝俣先生のお話は先生の承諾を得て作成させていただいています。
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授
ステージ4=末期がんで死の目前......という認識は時代遅れ。
がん治療は数十年前よりもかなり進歩していて、ステージ4の診断後でも10年、20年と生きる方がたくさんいます。
抗がん剤は免疫力を下げるので生ものを食べるのはNGと言われていましたがこれも誤解。
治療中に何を食べてもいいし、旅行に行っても大丈夫。
仕事や普通の生活をしながら治療ができるようになっています。
先進医療も誤解が多く、研究的な治療で、治験が進まないので政府が認めた機関のみで行っていい自費の診療のこと。
特別に最先端の医療ではないことも多いので注意を。
厳しい審査で保険承認された、標準治療が最良だと肝に銘じてください。
がんで、離職が、4年前の調査の36.6%から、今回19.8%と減ったことは良かったと思います。
医療者からのはたらきかけは、約4割ともう少し増やしてほしいところですね。
1.保険が効かない高額な医療(自費・自由診療)
2.「どのがんにも効きます」という文言
3.「免疫力アップ」と謳っている
4.個人の体験談が紹介されている
5.細胞実験・動物実験の証拠しかない
6.「がん予防に効果あるからがん治療に効く」わけではない
薬機法では、未承認薬の広告や誇大広告は禁止されています。
薬機法違反している、クリニックや、ホームページがあったら、通報しましょう。
これ本気でやったら、数百以上のクリニックが該当します。
>> 厚生労働省:医薬品医療機器等法違反の疑いがあるインターネットサイトの情報をお寄せください
最近のがん薬物療法はとても高額になってきていますので、ほとんどの患者さんが、高額療養費制度を使っています。
それでもやりくり大変ということで、時々、2ヵ月おきにしてほしいなどの相談を受けます。
高額療養費制度はよく知られていますが、障害年金制度はまだほとんど知られていない。
がん患者さんの受給率は0.5%しかない。
もっと多くの人に知ってほしい。主治医は障害年金の診断書の書き方を知っておくべき。
障害年金について知っておくべきこと:
進行がん患者であれば、誰でも適応になる。
早期がんであったとしても、障害の程度によって受給できる場合がある。
診断書は医師なら誰でも書ける。
働きながらでも、障害年金を受給できる。
などでしょうか。
障害年金申請の相談は、年金事務所でなくて、社会労務士さんに相談した方が良いと思います。
>> HPVワクチンで「子宮頸がんリスク5割低下」 スウェーデンの研究チーム
スウェーデンの国民登録データを使ったコホート研究の結果。
ニューイングランドジャーナルメディシン誌。信頼できる結果と思います。
この研究結果はランダム化比較試験の結果でないけど、信頼できる点は、全住民のデータを登録した前向き(コホート)データであること、背景因子のアンバランスを調整していること、感度分析(色々な方法でも同様な結果になるかどうか解析すること)を適切にしていること、などでしょうか。
体験談っていうのは、最もわかりやすい。「あの人が効くなら、私にも...」って思っちゃいますよね。
体験談を載せるのが、商品の宣伝には最も効果的って知ってますか?
芸能人などの有名人が言ったら、最も効果的。
体験談とか、料理とか洋服とか趣味の問題ならまだよいが..医薬品について、体験談は止めてほしい。
命に関わる問題になります。
ですので、医薬品について、体験談を宣伝することは、医療法による医療広告ガイドラインでも禁止されているのです。
科学ってそんなに単純、簡単でないのです。
特に、因果関係(〇という薬が〇という病気に効果がある)を証明するっていうのは、とっても難しいことなんです。
体験談と同レベルで信用できない情報として、○○教授が言ったこと、なんです。
あの○○教授が言ったから、と簡単に信じてはいけないんです。
これが科学なんです。
もちろん、私が言っていることも簡単に信用しないでくださいね(笑)。
こういう時にこそ、あわてず、あせらず、信頼できる情報を。確かなエビデンス(ファクト)に基づいている情報が大切。
ファクトに基づく議論をせず、政権批判、体制批判、人の批判に根付いている情報に注意。これらは、感情というバイアスが入って、エビデンスを歪めてしまいます。
不安につけこんで、「こうすれば大丈夫」「なぜこうしないのか!」とか、エビデンスも乏しいのに、人の感情に安易に訴えている発言にも注意。この中には、自称専門家と言っている医師も混じっているので注意。がんのトンデモ医療と似た構図がある。
本物の専門家というのは、安易に安心させたりするようなことは言わない。エビデンス(ファクト)は、時に、一般市民にとっては、つらく、聞きたくない情報も多い。それでも、本物の専門家は、苦しみを共有し、解決策を何とか探したいと思っている。
卵巣がんのドースデンス治療は、欧州人には効果なし。このランダム化比較試験は、製薬企業治験ではなく、医師主導臨床試験で、公的研究費を使っており、バイアスがかかりにくく、信頼できる結果。
日本人には効果あり?人種差があるのか?と考察されている。
人種差を越えて、効果が証明された治療が世界的標準治療になる。
世界標準治療になるのは、いかに難しいかということだと思う。
最近、中国からの患者さんがまた増えている。中国でもきちんとした標準治療が行われていることが多い。
問題なのは、日本のインターネットで、最先端の免疫細胞療法が受けられると聞いたので、それはどうか?という問い合わせが多い。
米国FDAで承認されておらず、日本の保険未承認の治療は、効果が認められているわけでないので、そんな治療は勧められないとお話している。
中国人は「いくらでも出す」と言う。免疫クリニックは、中国人をカモにするのは止めてほしい。
中国の方も、こうしたクリニックを告発してほしい。
"原発不明がん"って、原発巣をいくら探しても見つからず、転移がんで見つかるがん。
希少がんではあるが、臨床現場ではしばしば遭遇します。
ガイドラインもあり、適切に診断、治療をすすめていくことが大切なんですが、医師国家試験にも出ないので、知らない医師も多いがんです。
原発不明がんの中には、適切な診断、治療で、治すことができる原発不明がんがあるのですが、このことも知られていない。
原発巣がないと治療できないと、原発巣を探すのに、何か月も、何年もかかる、などということが大学病院でもある。
原発不明がんの診断、治療は、あらゆるがんの診断、治療を経験している医師、すなわち、"腫瘍内科医"でないと、きちんとした診断、治療ができない。