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第 I 相臨床試験の進み方について(1)

MDアンダーソンがんセンター
第 I 相臨床試験を専門とする科(Phase I Department)内にて
*正式名称
Department of Investigational Cancer Therapeutics
フェロー(日本でいう後期研修医)をされている
藤井健夫先生からの寄稿文と共に
私の理解も交えつつ
ここで紹介させていただきます。

*記事は複雑な流れや他の方法などの中、一番わかりやすい内容流れや内容を紹介しています。

今回のお話は
「第 I 相臨床試験の進み方について1」

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第 I 相試験の主な目的
1、副作用を理解すること
2、副作用と効果の最も良いバランスが取れるであろう薬剤の用量を見つけること


2の最もバランスの良い薬剤の用量の見つけ方について説明します。

下記の方法は
方法がたくさんある中で最も一般的なものの一つです。


まず。
いくつかのグループ(例えば1、2、3、・・・・X)を作ります。

投与する用量はグループ1が一番少なく、グループ2、3、と数が大きくなるにつれて用量も増やします。

増やす用量は、臨床試験のプロトコール(手引書のようなもの)に決められている通りに、少しずつ用量が増えていきます。

一つのグループには主に3-6人の患者さんを登録することができ、一旦、これらの3-6人の枠が埋まった後は、臨床試験開始後約1ヶ月程度、それ以上の患者さんの登録が行えないルールになっています。

この約1ヶ月というのは、その用量で許容できない副作用が本当に起こらないかを確認するための期間と考えてください。

万が一、許容できない副作用がプロトコールに書かれている基準以上に起こった際には、その臨床試験自体を中止しないとけません。

すなわち継続することは倫理的に許されていないのです。

以下は私からの藤井先生の質問と答えです。

=許容できないプロトコールに書かれている基準以上の副作用とはどの程度のものなのか?=

すべての副作用はCTCAE(注*1)という基準にしたがって、その重症度が判断されます。

その上でその種類の副作用がどの重症度以上で発現し、その後その副作用が適切な症状に対する治療や試験薬の休薬の上でどの程度継続するかなどで総合判断されます。


(注*1)CTCAEとは
Common Terminology Criteria for Adverse Events
有害事象共通用語規準といい、米国National Cancer Institute(NCI)がsponsored study (NCIのグラントでNCIが管理して行なわれる医師主導試験)の毒性評価のために、NCIが作成したものです。
がんの臨床試験で使用されるようになり世界に普及していきました。

有害事象の内容とグレードに分かれて評価される
有害事象:治療や処置に際して観察される、あらゆる意図しないまたは好ましくない徴候や症状・疾患を意味する。
グレード:正常を0、死亡を5と定義し、6段階に有害事象の重症度を分類する。

大まかに言うと・・・
基準以上の副作用をどの程度なのかをCTCAEの尺度で決めておいて、それ以上になると臨床試験をストップするというプロトコルを作っているということのようです。


=目的の一つにある副作用。この試験中に全ての副作用は出てしまうものなのか?=

もちろんすべての副作用がすべて出きってしまうということはないです。
第 II 相に進むにあったっての重要な参考になる程度の副作用は確認できると言えます。

=第 I 相では第 II 相に進めるかどうかの判断材料になる副作用を見極めるということですが、第 II 相でいきなり重篤な副作用が出たりするのは、参加する人数が多くなったりするからなのか?=

少ない容量から少しずつ用量を上げていって、副作用を基準に第 II 相で使う用量を決めるわけですが、その第 II 相で使われる用量で治療される患者さんは上記のグループ分けの所で説明した通り最大で6人しかいないんです。
他の人はそれよりも少ない用量で治療されている人ががほとんどです。
かならずしも用量が高いほど副作用が起こりやすい(用量依存)というわけではないのですが、用量が高いほど副作用が多くなる薬剤も多くありますのでその辺は大きな理由の一つだと思います。
あとはおっしゃるとおり、絶対的な人数の問題は大きいですね。
すべての用量をあわせても20人程度しか治療しないわけで(第 I 相では15人~30人くらいになることが多い)、例えば起こる可能性が1%の重篤な副作用が20人を治療した段階で見られなくても驚かないですよね。

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