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第 I 相臨床試験を選ぶ患者さんについて

MDアンダーソンがんセンター
第 I 相臨床試験を専門とする科(Phase I Department)内にて
*正式名称
Department of Investigational Cancer Therapeutics
フェロー(日本でいう後期研修医)をされている
藤井健夫先生からの寄稿文と共に
私の理解も交えつつ
ここで紹介させていただきます。

*記事は複雑な流れや他の方法などの中、一番わかりやすい内容流れや内容を紹介しています。


今回のお話は
「第 I 相臨床試験を選ぶ患者さんについて」

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(写真はMDアンダーソンがんセンターの新しい外来棟)


第 I 相臨床試験科では第 I 相臨床試験を用いて
主に固形悪性腫瘍の治療を行っています。

より詳しく言うと、
手術や放射線、標準治療として認められている
抗がん剤やホルモン療法などの全身治療をすべて行った結果
がんを完全に治療しきる(根治)可能性が極めて低い、
あるいはがんの勢いを抑える有効な治療がない
と判断された患者が多くを占めます。

そのため、ほぼすべての患者が、
MDアンダーソンの他の科や他の病院で
すでに標準治療を受けた状態で第 I 相臨床試験科を受けます。

では、だれでも第 I 相試験に参加できるのでしょうか?

答えは「いいえ」です。

それぞれの臨床試験にはプロトコールと言われる、
手引書のようなものが存在します。

数十ページにわたり
「どのような患者さんがこの試験に参加できるのか」
「いつ血液検査をするのか」
「いつ、治療の効果を見るための画像検査などを行うのか」
「その他、必要な検査は何でいつ行われるべきか」
などが詳細に書かれています。

そのなかに、臨床試験に参加するための条件が書かれています。

「組み入れ基準」「除外基準」
と呼ばれ多くの場合数十項目にわたります。

これらの基準を満たして初めて
臨床試験に参加する資格があるとみなされます。

この基準を一つでも満たさない場合は、
医療者がどれだけその臨床試験に登録したいと思っていても
倫理的に許されることはありません。

各基準については、
臨床試験のプロトコールによってさまざまですが、
多くの臨床試験に共通するのは、

①患者が活動的、健康であること
具体的には、起床している時間の50%以上の時間を
ベッド外ですごす程度の活動

②全身の臓器機能
貧血の程度や血小板、白血球、腎機能、肝機能など
が保たれていることなどがあります。

すなわち、
標準治療でのがんのコントロールが困難になった患者のうち、
まだ活発に活動できるだけの身体を維持し、
臓器の機能も保たれている場合に第 I 相試験への参加を
検討することが出来るのです。

=追記=

上記の「まだ活発に活動できるだけの身体を維持し、臓器の機能も保たれている場合」の理由として、第 I 相臨床試験の場合、どのような危険が起きるのかが見えないため、問題が起きても処置の可能な範囲になりそうな、もしくは大きなダメージにならない患者さんを参加条件とするようです。
詳しく説明すると、
第 I 相試験ではまったく初めて人に投薬するわけで、投薬した結果どの程度の身体的負担(これは患者さん自身が感じる体調の変化)と臓器負担(かならずしも患者さん自身が感じることはない、血液検査上の変化も含む。白血球や赤血球、血小板、肝機能や腎機能など。)が起こるか予想できないために、もともとその体が元気であり臓器が元気であることを求めています。
例えば、肝機能が完全な人(100%)が投薬によって肝臓の機能が30%落ちたとしても70%となり大きな問題になることが少ないですが、もともと肝機能が50%の人30%肝機能が落ちたら35%の機能しか残らなくなってしまいます。そのような、すこしのダメージで大きな問題となりかねないような人は最初から除いておく必要があるという考えに基づいています。

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