がん治療と向き合うに当たって
「どれだけ納得して向き合えるのか」
それが大切になると思います。
今回のお話は
「標準治療」について
「標準治療」という言葉、聞かれたことありますか?
アメリカそして多分日本でも国レベルで各症例の「標準治療」が整備されています。
そして、それらは日々の科学の進歩に合わせて更新されています。
「標準治療」とは何でしょうか?
科学的根拠をもとにして、より良い効果があると決定された治療方針です。
これは、病院ごと、医師ごとに違いがあるものではなく、どこに行っても同じ症例には同じ治療法が存在することを意味します。
治療は医師の勘や経験、研究や勉強だけを根拠に決定されるべきではなく、出来る限り多くの最新の科学的根拠をもとに決定されるものです。
「標準治療」を更新するための基準って何でしょうか?
EBM:Evidence Based Medicine:証拠に基づいた医療
ご存知の通り、医師によってそれぞれ見解が違います。
その見解が違うからこそ、科学的データという「共通語」に基づいて「標準治療法」を設けるのがEBMの考え方です。
つまり、標準治療とは、現在、最も効果があると科学的データを元に証明された治療法ということになります。
アメリカでは日本より一足早く、各治療に対するガイドラインが整備され、これに基づいた治療(EBM)が行われました。
以前お世話させていただいた乳がんの患者さん。
メディエゾン設立当時の患者さんの話になりますが、セカンドオピニオンを受けるためにMDアンダーソンがんセンターへいらっしゃいました。
乳房切除手術を受け、術後再発し、ある治療を投与されていたものの効果がなく、何か他の治療法はないかということで渡米されました。
初診を受け、必要な検査を受け、約1週間後にセカンドオピニオンとして治療法の話し合いがありました。
その時、医師から出たのは「どうしてこの治療を受けたの?」という不思議そうな言葉でした。
患者さんは主治医からの勧めで受けたことを説明されましたが、MDアンダーソンの医師は「この治療は標準治療ではなく、多分、試験的な治療だと思うけれど理解してる?」と。
患者さんは、日本の主治医からの説明もなく、ただ勧められたからという理由だけで治療を受けていたこともあり、試験的であることも知らずに受けていました。
もしかすると、その頃、日本にはインフォームドコンセントがそこまで浸透していなかったのかもしれません。
結果、「標準治療から始めましょう」というセカンドオピニオンとなりました。
患者さんは、自分が受けてきた治療が試験的なものであったことにとても驚かれたのと、信頼していた医師から説明もされていなかったこととで、当然ですがとでもショックを受けられ、お気持ちを思うと辛くてたまらなかった経験でした。
「納得して治療と向き合うため」には「標準治療が何かを知ること」が大切です。
皆さんの症例に合わせた「標準治療」って、一体なんでしょうか??
これを知ることは非常に大切です。
「標準治療」が何であるのか、それらの長所短所は何なのか、副作用の時の対処方法は、など、きちんと説明して頂ける医師って、すごいと思います。